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建設DXを実現する職員の働き方改革の一環として検索しやすく、情報が集まるポータルへと刷新 ── 株式会社大林組

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「目的の情報にたどり着く時間はリニューアル前の約半分に短縮。情報が集まる仕組みも整備され、今後の業務標準化の基盤となる社内ポータルへと刷新されました。」

大林組は全社的なDXを推進し、働き方改革推進課では職員の働き方を変え、さらなる業務効率化を実現する取り組みを進めています。その一環として建築事業に従事する技術系職員向けの情報提供の仕組みを改善すべく「建築ポータル」を刷新しました。「検索性の向上」「現場の情報が集まる仕組み」を目的としたリニューアルは、短期間の開発にも関わらず、大きな成果をあげています。

現場の働き方改革を実現する取り組みを推進

吉川様:
大林グループは、2022年度を初年度とする5ヵ年計画「大林グループ中期経営計画2022」を策定。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い人々の価値観や行動様式が変化し、デジタル技術が加速度的に進化を遂げる中、『建設事業の基盤の強化と深化』を推進する方針が定められています。

我々が所属する働き方改革推進課が新設されたのは2020年4月です。それ以前より、現場における業務効率化・生産性の向上を実現するため、現場の「ムリ・ムダ・ムラ」改善に向けた取り組みがスタートしており、それら取り組みも含め、現場における働き方改革を推進するための組織として設立されました。

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「欲しい情報にたどり着けない」「使われない」ポータルの課題

吉川様:
働き方改革推進課の取組の一つとして実施している施工現場で従事する職員との意見交換会を通じて、改善を求める声が大きかったテーマの一つに、「情報提供のあり方が不十分である」という課題がありました。具体的には、大林組における全社イントラネット配下にある、建築事業に従事する技術系職員向けのイントラサイト「建築ポータル」があまり利用されていないという課題です。

本来、建築事業に従事する技術系職員向けの情報が「建築ポータル」に集約されているはずなのですが、キーワード検索が行えない、情報の集約状況が分かりにくい等、利用者目線に立った際の利用を促進する仕組みが不十分な状況でした。また、全社ポータルを開くと、お知らせなどの情報が大量のポップアップで立ち上がるにも関わらず、建築ポータルを表示するには、全社ポータルより「建築ポータル」のメニューボタンを選択する必要がありました。

こうした動線の悪さに加え、全社ポータルではキーワード検索が可能となっていますが、検索性にも問題がありました。たとえば、職員が仕事に関する書類を検索したいときに、キーワード検索をすると膨大な情報がヒットしますが、その中には同じ種類の書類でも異なる各店向けの書類が含まれる場合があり、必要な情報になかなかたどり着けない、使い勝手が悪いという課題があったのです。

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「検索しやすい」「情報が集まる」ポータルに刷新

吉川様:
そこで、建築ポータルへの動線を整備し、建築ポータルの情報の検索性を高め、使い勝手を良くする目的でリニューアルを行うことにしました。

サイト刷新のポイントは、「検索性の向上」に加え、「職員から情報が集まるようなプラットフォームにする」こともポイントに定められました。これまで、現場における業務改善事例を投稿する仕組みが社内にありましたが、申請のハードルが高く、気軽に利用しにくい状況がありました。

そこで、職員が気軽に現場に役立つ「マメ知識」を投稿、共有して双方向のコミュニケーションが生まれる場に建築ポータルを位置付けたいと考えました。

サイト構築のパートナー選定は、2020年下期から本格化しました。下期の最初の3、4カ月で要求仕様書を作成し、2021年3月くらいにコルシスさんを含む複数の開発ベンダーに声かけを行い、コンペ形式で選定を行いました。

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「豊富なノウハウ」「パートナーとしてやりきる姿勢」が決め手

吉川様:
コンペを通じてコルシスさんを選んだポイントは、第一に「社内ポータル領域での豊富な知見、ノウハウがあった」ことが挙げられます。たとえば、検索性向上の課題解決に、情報に意味付けを行い、検索性を高める「タグ付け」の機能があります。情報にタグを付与することで、関連する情報のヒット率が向上するような「タグ検索」機能の開発に、コルシスは他社事例のノウハウを有しており、実現が可能だと思いました。

2点目は「オープン期限までにやりきるパートナーとしての覚悟が感じられた」点です。約半年という短期間での開発だったため、他のベンダーの多くは「間に合わないリスクを承知して欲しい」というニュアンスでした。その点、コルシスは、細かくフェーズを区切り、この機能まではスモールスタートが可能だ、この部分については次のフェーズでの実現とさせてほしい、など、「期限に間に合わせること」を前提とした前向きな提案をしてくれました。

──吉川様の話を受け、弊社 永谷 理は次のように開発のポイントを話しました。

「弊社の強みはCMSとしてMovable Type(MT)を用いたサイト構築に10年以上の実績を有している点。これをベースにどう細部を開発していくかを主眼に置きました。大林組様が実現したい機能には、MT単体の拡張では実現できないものがあったので、MTとは別にバックエンドで結合するシステムを作り、そちらに機能を実装する設計とし、開発チームにはMT以外にもノウハウの豊富なメンバーを加えスピーディに開発を進めることにしました」(永谷)。

リモート環境で対話を重ね、スピーディな開発を実現

吉川様:
リリースまでの時間が短かったため、コルシスさんには開発の進め方にも配慮してもらいました。従来のように設計、要件定義に時間をかけるウォーターフォール型の開発ではなく、最初の設計をコンパクトに、あとは設計しながらプロトタイプを作ってフィードバックを受けながら改善を重ねるアジャイル的な進め方です。

開発期間中は、技術側、業務側で定例会を毎週2回ほど開催しました。コロナ禍で基本、リモートでのやり取りの中で、業務やシステム、インフラを把握するのが大変だったと思いますが、対話を重ねることで進めてもらいました。

戸﨑様:
私は今の部門に異動する前は現場で働いており、建築ポータルのユーザー社員となる立場でした。そのため、開発中はユーザー視点で気になる点を伝え、使い勝手について、遠慮なく要望を伝えさせてもらいました。コルシスさんは、こちらの技術面の不明点に対する説明もわかりやすく、丁寧に対応してくれたのでプロジェクトは進めやすかったです。

吉川様:
開発を通じたコルシス側の対応は、コミュニケーションが円滑に運んだおかげで、認識の齟齬があってもすぐに対応していただきました。リモート環境だったにもかかわらず、私がこれまで経験した他のベンダーとの開発プロジェクトと比べても、最もやりやすかった開発現場の一つでした。

注力した3つの新機能

戸﨑様:
建築ポータルが対象とするユーザーは、全国の施工現場にいる約3000人の職員です。その人たちの業務に役立つサイトとなるべく、まず注力した機能は「検索性」の向上です。具体的には、次の3つの軸で検索できるようにしました。

  • キーワードやタグで検索可能な「単語検索」
  • やりたいことから検索できる「目的別検索」
  • 工種から必要な情報が探せる「工種別検索」

2つめの機能は「情報共有」の仕組みとして「現場事例の投稿」機能です。これは、タイトルと添付ファイルだけで、情報を投稿できるものです。投稿内容は、現場で役立つ便利な材料や商品紹介といった、仕事に役立つ「マメ知識」を想定しています。

そして、3つめの機能は「タスク管理機能」です。これは、いわゆるTODOリストで、これまで個人が付箋やメモ帳で管理していたタスク内容を建築ポータルで管理・可視化できるようにしたものです。建築ポータルを利用するきっかけとなり、業務改善の一環として利用してもらえる機能と位置づけており、今後は、Outlookの予定表と連携し、スマホからも確認可能にしていく予定です。

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検索時間は約半分に短縮

戸﨑様:
2021年10月末のリリース後、個別にユーザーインタビューを行いました。旧ポータルに感じていた課題や不満はリニューアル後に解決したかを聞き、その際に、特定のキーワードで検索をしてもらい、その時間を計測しました。

その結果、情報にたどり着く時間がリニューアル前後で約半分に短縮されました。リニューアルによって検索性が高まったことを示すデータだと思います。

吉川様:
リニューアルを機に、行動データを取得して、現状を可視化、改善していく仕組みも整備しました。コンテンツごとのログを取得する仕組みをコルシスさんに開発してもらい、ユーザーの閲覧状況や閲覧傾向、あるいは検索にかかる時間を可視化する仕組みです。

これによると、50%の職員が新しくなった建築ポータルを利用し、9%が依然として旧ポータルを利用しています。新旧を併用している職員は30数%となっており、このあたりの利用状況改善が今後の課題だと感じています。一方、定性的な効果については、リニューアル後に、全国100の現場に行って、様々な職員の声を聞きました。新ポータルについては当然賛否両論あったものの、中には「大林組の職員だけでなく、協力会社などから出向、派遣されている職員に対する情報提供も改善しなくてよいのか」という声もありました。こうした声は、情報提供の仕組みを改善していることが浸透し、職員の意識が変わってきている現れだと考えます。

「業務標準化の実現」に今後も支援を

吉川様:
今後は「業務の標準化」がキーワードです。社長直轄の働き方改革推進プロジェクトチームにて、大林組の次世代の業務ルールを整備する「O-standard(仮)(オースタンダード)の早期確立」という重点施策が掲げられており、それに向けて各本部が連携し、取り組みを推進しています。

建築事業に従事する職員向けにも、現行の業務ルールの見直しを図っており、改訂した業務ルール等を一元的に取りまとめたWebサイトを作り、情報発信を行っていきたいと考えています。建築事業に従事する職員にとって「これを見れば、大林組の業務ルール(スタンダード)が分かる」というサイト開発を今後、本格化していく予定です。

コルシスの開発メンバーには今後も、建築ポータルの仕組みを発展させ、多くのステークホルダー巻き込みながら、大林組の業務標準化を浸透させるお手伝いをお願いしたいです。

戸﨑様:
建築ポータルのリニューアルでは情報の見せ方を整理しました。しかし、階層が深くなると情報が探しにくくなる課題も見受けられています。また、現場の事例投稿をもっと気軽に行えるよう、現場が参加しやすい、親しみやすい雰囲気を、視覚面、内容面の両面で作っていきたいです。

コルシスさんには、情報の見せ方、伝え方に関する豊富な知見をもとに、専門的な見地からより良いポータルにしていく支援を今後もお願いしたいです。

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